ここ数年、輸入のアナログ盤を買うと稀にジャケットの中に紙片が一枚入っていることがある。たいていは”Get Free Music!”などと大書してあって、下にアルファベットと数字の羅列によるキー・コードが印刷されている。これは俗に「ダウンロード・キー」と呼ばれるもので、インターネット上でそのレコード会社のサイトへ行くとダウンロートのコーナーがあり、そこにそのコードを入力するとデジタル(たいていはMP3)音源を無料でもらえるのだ。
こちら、DLキー付きのアナログ盤こういうサービスがあるといちいちアナログの音をデジタルに変換してiPodなどの携帯機器で聴けるようにする苦労がいらないし、CD-Rに焼いて友達にあげたりもできるのでなかなか嬉しいものであります。
これはなかなか上手い方法で、訪れたサイトではダウンロードするためにメールアドレスを登録させたりfacebookのアカウントにレコード会社やミュージシャン本人のアカウントをリンクさせたりして、新譜や活動の情報を送れるようになる。事実、僕のfacebookのアカウントはPaul McCartneyやBruce Sprtingsteen、Diane Birchといった人にフォローされていて(笑)彼らが新曲や新譜を出すとすぐにお知らせが来る(そしてついつい買ってしまう)。
まぁそういうリンクやフォローは切ってしまうことだって簡単にできるんだけど、自分が好きなミュージシャンとつながっている(もちろん先方がこっちを知らないのは重々承知しています)と思うとなんとなく嬉しくて、そのままにしてあったりするのは向こうの思うつぼであります。
しかし、よく考えてみるとなんだかヘンである。ミュージシャンによってはダウンロードではなくてLPにCDそのものが付いていることさえあるのに、それとは別にCDも同じような値段で売っていて、となるとCDしか買わなかった人にはレコードが付いてくることはないわけだから不公平だと考えはしないだろうか、と心配になるのだ。でもそれはないんですね。CDを買う人はレコード・プレーヤーを持っていないから要らないのです。あたりまえだ。
アナログ盤を買ってみたら……
デジタル盤=CDも付いていましたとなると、ようするにこういうことです。つまりレコード再生できる環境を持っている人(=レコード買う人)はレコード会社から大事にされているのだ。中には「できればレコードで聞いてほしい」と言うミュージシャンだっているし、挙げ句に「この曲はレコードでしか出さない(しかも7インチのシングル盤)」なんていう人もいるくらい。
まぁこうなるとある種「偏屈」とさえ言えるかもしれないけれど、世界には少ないものの「アナログ派」はまだまだ存在している、という実証でもあります。
ものを大事にしている人がそれを作った人から大切にされる。愛用していたものが壊れたときなどに「修理するより新しいものを買った方が安い」というどうにも得心できない事態に出会うことの多い昨今、「作り手=買い手」のとても美しい関係だと言えるのではないか、と瞑目して微笑みたい心持ちになるのでした。一部、アナログ盤新譜を法外な高値で販売(しかもデジタル音源のオマケもナシ)するミュージシャン(誰とは言いません)が見受けられますが、あれは「大切に乗っている古い自動車に高額な税金を課す愚法」と同様、真摯な音楽マイノリティを痛めつける蛮行であります。猛省を促したい。
懐かしい? シングルレコードさて、ここまで考えてハタと気がついたのは先年「一時的」ではあったけれど販売されてなんとなく不可解だった「アナログ盤大ジャケット付きCD」というものの存在理由である。つまりレコードとCD、どちらが好きかと言われれば迷わず「レコード」と応える理由はもちろんその音質やそれを再生させるための行為のダイナミズムが好きなせいもあるけれど、今となっては重厚長大といってもいいあの「ジャケット」に愛着があることで、してみるとあの商品は「レコードを再生する環境は持たないもののあの大きなジャケットは好き」という人を対象にしたものだ、と了解したのであります。
むろん当時それを買った人は「何を今さら」と思うでしょうが、こちらは「レコード派」であるが故に眼がふさがれていた(まぁそんなに真面目に考えたことがなかっただけですけど)であります。許されよ。
そんなわけで「省スペース」、「簡便化」を主眼に開発・製造されたCDというパッケージとしてはいささか矛盾した商品ではありましたがなるほどね、と思う春の宵でした。
今回は軽めにこの辺で。まだ寒い日もあるとはいえもう往時の寒さは消え失せたこのごろ。どちらも輸入物とて安く手に入る「タコ」(モロッコorモーリタニア?)と「海老」(フィリピンorタイorインドネシア?)を使ったニンニク炒めで冷えた白ワインをGO!
【Panjaめも】
●僕が買ったときよりさらに安くなっている!
Nick Loweの新譜アナログ盤 。穏やかな1枚でした。
●こちらはアコースティック・スウィングの怪人ダン・ヒックス 。
まだCDは付いているようです。
●で、これが7inchシングルでしかリリースされないと言うヴァン・ダイク・パークスのEP盤。
全部で8枚出るといううちの1枚 。はー、困ったもんだ。