第20回PFFスカラシップ作品『家族X』舞台挨拶に吉田光希監督、南果歩に田口トモロヲが!

kazoku01.jpg kazoku02.jpg 第20回PFFスカラシップ作品『家族X』(吉田光希監督)が渋谷ユーロスペースで9月24日(土)より公開。初日の舞台挨拶にキャストの南果歩、田口トモロヲ、郭智博と吉田光希監督が登場した。

吉田光希監督は4作目の自主制作映画『症例X』(07年)で、第30回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)の審査員特別賞を受賞。第61回ロカルノ国際映画祭、第46回ウィーン国際映画祭、第6回メキシコ市国際近代映画祭、第11回ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭の招待作品となる。
第20回PFFスカラシップの権利を獲得し、本作で劇場デビューを果たした。本作は第61回ベルリン映画祭、第13回ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭、第12回全州(チョンジュ)国際映画祭、第9回ローマ・アジア映画祭に出品される。

同じ家に住みながらも、お互いに関わることをいつの間にか失ってしまった家族を描くこと、そして、それを回復する瞬間を捉えることで、日常に埋もれ、見過ごしていたかもしれない家族の繋がりを発見するきっかけにしたかった――。(吉田光希監督)

●ご挨拶をお願いいたします。

南:数多く公開される映画の中で『家族X』の初日にお越しいただき、ありがとうございます。この作品は昨年の6月から一軒家を借りて、ずっとその家の中と周辺だけで撮影をしました。この家族は外から見ると平穏な生活を送っているように見えますが、家庭内に一歩入ると三人それぞれ別の社会と思考を持ち、家族はひとつではなく一個人の集まり。そのことを、この役を演じて痛いほど感じました。撮影当時、吉田監督は29歳という若さで、妻、夫、息子のひとり一人の心の奥底をしっかり見つめ紡ぎだそうとする、とても20代とは思えない深い眼差しをもった監督でした。私はひとりでいるシーンが多かったのですが、ひとりの人間が生きていくには、他者の眼差しが必要なんだなと痛感しました。

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田口:ほとんど南さんが語られたのですが、この作品は撮影中、非常に痛い思いで現場に通っていました。しかし、今の閉鎖的な世の中で、痛いけど誠実な日本映画ではないかと思います。この作品に参加出来たことを誇りに思います。こんなに若くして、ここまで人間の孤独な魂を見つめる監督の生い立ちを聞くのが怖いです(場内笑)。ですので、楽屋でも会話を避けました(場内笑)。映画はお客さんが観て完成するものだと思っていますので、みなさんの感想をぜひ、ツイッターってヤツで……ツイット?(南から「ツイートするですよ」とツッコミが)……あー、ツイートですね(場内笑)、していただければと思います。

郭:だいたいのことはお二人が言われた通りでございます。ですから、僕はなにも言うことがありません……(場内笑)。楽しんで……楽しむ映画ではないですけど、なにかを感じでいただければと思います。

吉田監督:やっと自分の映画が上映されるようになったんだなって実感しています。先ほど田口さんが生い立ちを聞くのが怖いというお話をされましたが……前回の舞台挨拶のときにその話が出なくてよかったなって思いました。実は前回の舞台挨拶に両親がいたんですね。

田口:あー!(場内笑)

吉田監督:それを聞いていたらひっくり返っていたかもしれません。

田口:それは、まずいですねー。

吉田監督:このタイミングでよかったです。

田口:申し訳ないです……。

吉田監督:これから作品をご覧になるみなさんにひとつヒントを。この作品のチラシの(下メイン写真)路子さん(南)の目線の先にあるものが映画のファーストカットにあります。そのカットはラストカットにも関係がありますので憶えておいてください。

●キャストのみなさんから吉田監督にエールをいただけますか?

南:今回は家庭をテーマに描いていますけど、十代の青春モノや子供が主役の作品を撮ったとしても、きっと生きている人間の奥底にある小さな心の揺れとか孤独といったものを見つめ続ける監督だと思います。それが、たとえコメディであってもその視線はブレない。『家族X』が世に出て吉田監督が作品を創るチャンスが増えることを橋本家一同祈っております。また、別の機会で再会できることを楽しみにしております。

田口:僕は先ほど失言してしまったので、次回の吉田監督作品の出演はないなと……(場内笑)ご両親には本当に申し訳なく……たとえ幸福で普通の家庭で育ったとしても表現者として孤独な魂を見つめる目線があると、私は言いたかった。なので吉田監督のご家庭でこの映画のようなことがあったのかなということを話したわけではありません……(場内笑)。
(改めて)吉田監督には、数で淘汰されるような作品ではなく、成瀬巳喜男やジョン・カサヴェテスのような痛いけれど人間の本質を凝視する、その中のひとりとして繋がっていく監督になってほしい。

●監督の存在が宏明役に投影されているのでは?と思われますが、郭さんいかがですか?

郭:僕の気持ちを尊重していただき、現場ではいろいろと相談しながら進めていきました。年齢はあまりかわらないですけど、このような作品が創れる才能を羨ましいなって思います。ハイ!

kazoku06.jpg ●吉田監督、これからどのような映画を創っていきたいですか?

吉田監督:みなさんの
今の言葉を聞いて、早く次の作品を撮らなくてはいけないなって思いました。「あー、吉田撮ったな」って思っていただけるよう頑張りたいと思います。今回もっと若い人を中心に制作しようと準備していたんですけど、このような痛々しい作品になって……(笑)。でも、自分はそういうところが得意なんだなって……そういうところが見たいというか、そういった不安を確かめたがる、得意なところを撮りながら、また違ったところもみなさんに見せられたらと思っています。

●前作の『症例X』は、もっと年齢が高かったですけど、ちょっと若返りましたね!

吉田監督:そうですね。『症例X』は10月8日(土)から上映されます。『家族X』の先に『症例X』があるように思っています。まったく違う撮り方をしていますので、そちらもご覧ください。

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■家族X(第20回PFFスカラシップ作品)
失われた家族を人はどう回復していくのか? 3.11以降の日本の家族の姿を予知させる、“家庭内行方不明者”を取り戻す旅が、いま始まる――。
主婦・路子(南果歩)が日々寸分の狂いもなく配膳する食卓は、寸分の狂いもないがゆえに家族の息吹がふきこまれることはない。夫・健一(田口トモロヲ)にとっての家は、帰る場所ではなく、終わりのない回廊が張り巡らされた辿り着けない場所だ。息子・宏明(郭智博)は自分がどこにもいないことを知っている。東京郊外の新興住宅地。橋本家もほかと同様、砂上の楼閣のように揺らめき、足場を失っている。姿はあるのに誰もいない椅子、いない部屋、いない家は、最初に路子がバランスを失ったことで傾き、大きな渦に呑み込まれていく……。

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PFFスカラシップ
1984年から始まった、世界でも類のない“映画祭がトータルプロデュースする映画製作奨励制度”。映画祭のコンペティション部門「PFFアワード」の入賞者に挑戦権が与えられ、次回作の企画を提出、その中から毎年ひとりのオリジナル作品をPFFが企画、脚本、撮影、公開、そしてDVD発売などトータルプロデュースすることで、自主映画監督のデビューを支援している。荻上直子(『トイレット』)や李相日(『悪人』)など、日本映画を牽引する監督を輩出している。『あそびすと』サイトでピックアップしている園子温監督もそのひとりである。

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吉田光希(よしだこうき)
1980年、東京都出身。東京造形大学在学中より、塚本晋也監督作品を中心に映画製作現場に参加。美術助手、照明助手、助監督などを体験する。現在同大学の学長を務めている諏訪敦彦監督には、もっとも才能ある若者と評され、今後の作品にも期待が寄せられている。
●フィルモグラフィー●
(自主制作作品)『螺旋的常勝的』(04年)10分/『エチカ』(06年)50分/『サイレンス』(06年)30分/『症例X』(07年)67分=★ユーロスペースにて10月8日(土)より2週間限定公開!
(劇場公開作品)『家族X』(10年)90分


監督・脚本:吉田光希
出演:南果歩/田口トモロヲ/郭智博/筒井真理子/村上淳/森下能幸
配給:ユーロスペース+ぴあ
公開:9月24日(土)、ユーロスペース他にて全国順次ロードショー!
公式HP:www.kazoku-x.com
あそびすと記者会見:吉田監督、鈴木杏が登場
 

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