【ボートレース】年末の風物詩"決定戦"スタート(その1)今年もやります黒須田守の「グランプリ(賞金王決定戦)の見どころ」

――12月になりますと、各界でのその年の総決算となるイベントが目白押しとなります。当サイトでは『旅ゆけば博打メシ』を連載いただいている『BOATBoy』編集長・黒須田守さんのボートレース界も、今年の獲得賞金ナンバーワンの決めるレースが年末にかけて男女別で行なわれます。その見どころを昨年に引き続き、今年もおうかがいしたいと思います。よろしくお願いいたします。
黒須田●こちらこそ。
――二回に分けてお送りします前半は、明日18日から開幕の「グランプリ(賞金王決定戦)」の見どころです。
黒須田●よろしくお願いいたします。明日の開幕に先駆けまして、前検日である本日より会場のボートレース平和島にて来ています。その模様はほぼリアルタイム更新の『BOAT RACE ビッグレース現場レポート』にてお楽しみください。


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キリッと取材中の黒須田守編集長。
後光が差しております

アツいレースが6日間、新システムで1億円が争われる

――さて、黒須田さんの注目選手に行く前に、このグランプリは今年から大きくシステムが変更されたそうですね。
黒須田●はい。このレースの位置づけなどは昨年のページを再読していただくとして……あ、昨年私が申し上げた見どころと結果については気にしないでください(笑)。概要を申し上げますと、昨年までのグランプリは「チャレンジカップ最終日までの賞金上位12名」が、「予選を3戦し、その上位6名が優勝賞金1億円の優勝戦に臨む」というものでした。これが今年より、「チャレンジカップ最終日までの賞金上位18名」が、「まず7位〜18位までの選手による『トライアル1st.』を初日、2日目(2戦)に行い」ます。続いて「トライアル1st.での成績上位6名と、賞金1位〜6位の選手を合わせた12名で『トライアル2nd.』を3、4、5日目(3戦)に行い」まして、「トライアル2nd.での成績上位6名が優勝戦に進出」します。トライアル2nd.に進めなかった選手は、同時開催の「グランプリシリーズ戦」へ回ります。詳細につきましてはこちらのHPもご参照ください。
――選手にとってグランプリへの出場枠、1億円獲得のチャンスが広がったわけですね。
黒須田●そういうことになります。これまでのグランプリはトライアル(予選)が3日目からでしたが、今年からは初日から1億円を巡る攻防が始まります。ファンにとっても見応えのある6日間になりそうですが、レースを走る当の選手たちにはなかなか厳しい、と言いますか、やってみなければわからない6日間にもなりそうです。
――と、言いますと?
黒須田●いくつかあるのでおいおいお話しいたしますが、まず昨年までは賞金1位〜12位の選手ならばトライアルの3戦目、最後まで1億円のチャンスがあったはずが、今年は7位〜12位の選手は途中でその権利を剥奪されてしまう可能性があります。トライアル1st.での脱落が決まるとシリーズ戦に回ることになりますから、優勝賞金1億円の舞台から一転、優勝賞金1600万円のレースに出ることになります。これは今年から恩恵を受ける13位から18位の選手も同じですね。1億円のはずが……となってしまう。
――私が取材をしていたころも、シリーズ戦の出場選手はとても寂しそうでした。なるほど、辛いサバイバルではありますね。
黒須田●そうですね。私としてもそこがキモで、そのおかげでレースが初日から盛り上がる可能性は高いと思います。ただ、選手にとってはツライですよね。先日、元選手の青山登さんに「賞金王決定戦の思い出」をうかがったのですが、出てくるレースってご自身が引退された後に観ているレースなんですよ。青山さんも現役時代はSGに手が届きそうという選手でしたから、“自分が出ていない賞金王決定戦”を観たくないんですね。何度か出場したシリーズ戦についても、やはり複雑な心境だったそうです。
――はい。
黒須田●それが今年はグランプリに出ていたはずなのにシリーズ戦への転戦となる選手が出るわけですから残酷というか……正直、ある種の“罰ゲーム”に近いのじゃないかとすら思いますよ。だからこそこれはアツいですよね。
――グランプリの優勝戦はもちろん、トライアルも“アツいレース”の代名詞ですが、それが残酷さまで含んで初日から行なわれる、と。
黒須田●わずか2戦でそれが終わってしまうのですから、気持ちで負けた選手は生き残れないと思います。
――賞金順位が下の選手は1戦目が外枠ですから、2走目の枠順抽選でも外枠を引いたりするとなおさらキツイですね。
黒須田●いや、確かに外のほうが不利ですが、今年は平和島なので、いつもの住之江開催よりも外枠の選手が上位に来られる余地があります。そして同じように住之江のように内枠が絶対有利でもない。それだけにチャンスも広いので、やっぱり舟券握って見る側にとっては、おもしろいレースにならないわけがないでしょうね。選手には申し訳ないですが、彼らがキツイほどおもしろいのも間違いないですから。

第29回グランプリ(賞金王決定戦)12月18日(木)トライアル1st.初日11R
1,今村豊 2.瓜生正義 3.茅原悠 4.今垣光太郎5.桐生順平 6.石野貴之

第29回グランプリ(賞金王決定戦)12月18日(木)トライアル1st.初日12R
1,井口佳典 2.仲口博崇 3.毒島誠 4.池田浩二 5.丸岡正典 6.田村隆信
※出走表は主催者発表の物とご照合ください

――それではまず1st.に登場する選手から、黒須田さんの注目選手を教えてください。
黒須田●これは文句なく田村隆信(徳島)です。
――はい、断言いただきました。
黒須田●選出順位18位ですから、トライアル初戦の6号艇になります(初日12レース)。彼の場合は6号艇、外枠だからというのとは関係なく、とにかく“勝ちに行くレース”をしてくれます。
――ボートレースは枠番に関係なく、有利な内側のコースを、スタートが難しくなるなどのリスクを取りつつも取りに行くことができます。そんな“前付け”に積極的に動く選手という印象があります。
黒須田●前付けは当たり前ですし、今年に入ってホント、いろいろなことを田村はしてくれています。内のコースが有利なボートレースで1号艇で3コースに出てみたり、“予行練習”とも言える「スタート展示」では前付けに動かなかったのが、本番では裏をかいたように前付けしてみたり……。そんな選手が6号艇で出てくるのですから、なにもしてこないわけがない。この人がレースをかき回すのは間違いないので、彼の一挙手一投足に絶対に注目ですね。田村から舟券を買ったらきっと後悔はしないはずです。
――それは舟券を買う上では大きな要素です。
黒須田●6号艇ですから人気にもならないですしね(笑)。初日の12レースは田村◎でもう決めていますよ。
――そのレースの1号艇は同期85期の井口佳典(三重)ですね。
黒須田●そう。この同期ふたりはバチバチにやり合いますからね。スゴいレースになりますよ、間違いなく。
――やはり初日から楽しみな新生グランプリになりそうですね。


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黒須田編集長イチオシの田村隆信。
トライアル1st.も縦横無尽に突き抜けるか

黒須田●あとは……勢いで言うと選出順位12位の茅原悠紀(岡山)。彼はとにかくターンがスゴい。いま誰に聞いてもターンがスゴいと評判なのは茅原で、あとは選出順位11位の毒島誠(群馬)に、選出順位16位の桐生順平(福島)。素晴らしいことに3人ともグランプリに進出したのだけれど、中でも上り調子なのは茅原です。まあ彼は今年の平和島周年記念(GI)の優勝戦でフライングを切ってしまったので、そのリベンジという思いも強いと思います。
――茅原を含めた若手3人衆に期待大ですね。
黒須田●ホント、選手が「対処できない(ターン)」と言っていますからね、この3人は。茅原と毒島は2号艇、桐生は5号艇からレースが始まりますが、彼らのターンにも注目です。……最後にもうひとり。やっぱり今村豊(山口)にも注目ですよね。
――今年53歳も、SGで2優出。衰え知らずの“ミスター・ボートレース”ですね。
黒須田●はい。この選手は今年で29回を数えるグランプリの第1回に出ている方ですから。トライアルが2戦だったとか、グランプリ……賞金王決定戦の変遷をすべて体験してきた選手です。優勝こそできませんでしたが、ボートレースオールスター(笹川賞)、グランドチャンピオン(GC決定戦)と連続でSG優勝戦1号艇ですからね。惜しくも選出順位8位でトライアル1st.からになりましたが、優勝まで充分に考えられる選手です。
――応援したくなりますね、やっぱり。
黒須田●ほかにも今垣光太郎(石川)、瓜生正義(福岡)などなど、実力者ばかりですからね。重要なモーター抽選は、18人のグランプリ出場選手が全員揃って平和島のモーター2連対率上位18機から抽選しますから、上位機が当たれば誰がトライアル2nd.に進出して、そして一気に優勝までかっさらっても不思議ではないですよ。


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選手間でも「対処できない」ターンの持ち主とされる茅原悠紀

第29回グランプリ(賞金王決定戦)12月20日(土)トライアル2nd.初日11R
1,太田和美 2.松井繁 3.吉田拡郎
4〜6号艇はトライアル1st.からの進出者

第29回グランプリ(賞金王決定戦)12月20日(土)トライアル2nd.初日12R
1,菊池孝平 2.山崎智也 3.白井英治
4〜6号艇はトライアル1st.からの進出者
※出走表は主催者発表の物とご照合ください

――それではトライアル1st.からの選手を迎え撃つ選出順位1〜6位の選手たちですが。
黒須田●ひとくちに誰が注目、というのも難しいですよね。今年、特に大活躍をした選手たちなのですから。これまでいちばん稼いでいるのは文句なくキクちゃん……菊池孝平(岩手)で、SGを連覇しての賞金順位1位です。勢いならばオーシャンカップでSG初優勝の吉田拡郎(岡山)、チャレンジカップはさすがの強さだった太田和美(奈良)、ボートレースメモリアル(MB記念)でついにSG制覇となった白井英治(山口)、SGこそイマイチでしたが今年GI5勝で乗り込んでくる山崎智也(群馬)……と、誰であっても要注目なのですが、それでもやはり松井繁(大阪)なんですね、私は。
――昨年に引き続き“王者”松井ですね。
黒須田●昨年と同じく松井ではありますが、今年の注目はとにかく「平和島でのグランプリ」なんですよ。
――グランプリといえばこれまで24回は松井の地元の住之江で行なわれていますが、今年は14年ぶり2回目の平和島でのグランプリです。
黒須田●松井は平和島でのSG優出などもしているのですが、一般戦でも平和島では優勝したことがありません。「平和島はいちばんと言っていいほど苦手」と公言しているくらいなんですよ。グランプリ=松井繁と言ってもいいほどですけれども、こと平和島ではどういうレースになるのだろう、と。
――いちばん苦手と言っているレース場で、自分の代名詞のようなレースに参戦するわけですね。
黒須田●平和島での14年前のグランプリにも松井は出場していますが、今とは立場が違います。そのときからもちろん強い選手でしたけれど、まだ30歳そこそこの若手でもあったんです。その後にとてつもない実績を重ね、“王者”と呼ばれるまでになった松井が初めて迎える平和島のグランプリ、ここでどんなレースを見せてくれるのかは大注目ですよね。
――やっぱり平和島は苦手なんだ、か……
黒須田●やっぱりグランプリならば平和島でも松井は強い、なのか。非常に興味があります。
――茅原のターンがスゴいとか、田村のレースがおもしろいとかではない、第一人者ならではの注目点ですね。
黒須田●そうですね。先にも言いましたが、松井も含めて今年のボートレース界で大活躍した選手が上位6人なのですから、田村の◎で決めているとかそういうこと次元ではない、“王者”松井繁という選手がどんなパフォーマンスを見せるのかに注目をしていただきたいと思います。


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“王者”松井繁。
グランプリにて平和島の初優勝なるか、そのレースぶりに注目

期間中は平和島でモーター「53」、「70」を追えば舟券も当たる!?

――ありがとうございました。新システムとなってのグランプリ、選手は大変ですがとにかくファンにはおもしろいものになりそうですね。
黒須田●そうですね。なにせ今年からのものですから、やってみないとどうなるのかわからないこともいっぱいあるはずです。たとえばトライアル1st.を行なっている2日目までは、トライアル2nd.で待っている上位6人はレースをしません。
――モーターの調整はできるのですよね?
黒須田●できますが、実際にレースをしてみるのと調整だけをしているのでは、やはり全然違うのだそうです。プロ野球の“クライマックスシリーズ”で、シーズン1位通過のチームが、2位と3位のチームを待っていると実戦感覚を忘れてしまうという話も聞きますよね。
――因果関係はわかりませんが、今年のセ・リーグでは待っていた1位のジャイアンツが、勝ち上がってきたタイガースに4連敗で敗れました。
黒須田●新システムはボートレース版のクライマックスシリーズと考えられますから、プロ野球と同じような形で待つ上位6名がそんなに有利ではないのではないか、とも囁かれています。しかも、肝心なモーターに関しては参加18選手の一括抽選ですから、上位選手に下位のモーターが当たる可能性もある。1位のモーターと18位のモーターだとかなり大きな性能差になりますから……。
――たしかに上位6名がそんなに優遇されているとも思えなくなってきましたね。
黒須田●まさにここはやってみないとわからないところなので、繰り返すように選手はたまったもんじゃないかもしれませんが、ファンの立場ではそういった不明な点も含めて楽しんでいただければいいかと思います。
――いままでのSG、グランプリにない、様々なシーンが見受けられそうですね。『BOAT RACE ビッグレース現場レポート』、そして『BOATBoy』でその模様を楽しみに読ませていただければと思います。
黒須田●グランプリの開催中は、レース場は毎日興奮のるつぼです。特に23日の優勝戦は大歓声がわき起こるはずですので、みなさん平和島までぜひいらしてください。地上波でも放送されますので、来られない方もぜひ優勝戦をご覧になってみてください。
――ありがとうございました。
黒須田●こちらこそ。……あ、最後にひとつ。今回舟券を買ってみようと思った方、グランプリに使われるモーター番号「53」、「70」。この二機が注目です。とにかく“噴いている(性能がいい)”モーターで、このいずれかを引き当てた選手が一気に優勝まで駆け上がっても不思議ではありません。ご参考までに。
――お、最後の最後にありがとうございました。
黒須田●で、その抽選結果なのですが、17日に行なわれたグランプリ前夜祭で公開抽選が行なわれまして、53号機を今年のボートレースダービー(全日本選手権)覇者である仲口博崇(愛知)、そして70号機を注目の桐生が引き当てたとお伝えしておきます。
――おお、仲口は地元のダービーでもエースモーターを引き当て悲願のSG初優勝となりました。その再現もありそう、ということですね。
黒須田●はい。モーターが決まるといよいよだな、と思いますね。
――そんなグランプリの結果も含めまして、来週は「クイーンズクライマックス」の見どころをお送りします。
黒須田●そちらもどうぞお楽しみに。