2016年にジェフユナイテッド市原・千葉は25周年を迎え、これを記念した映画『U-31(ゆーさんじゅういち)』を制作。原作は、大人気サッカー漫画「GIANT KILLING」の原作者である綱本将也により「モーニング」にて連載されたサッカー漫画「U-31」。主演を務めるのは数多くの映画、舞台、ミュージカルで活躍中の馬場良馬(スーパー戦隊シリーズ「特命戦隊ゴーバスターズ」)。また、ライバル選手役に中村優一「仮面ライダー電王」)。その他、業界でも有名なサッカー好きである、大杉漣、勝村政信、谷村美月らが脇を固める。
4月に行われた「島ぜんぶでおーきな祭 第8回沖縄国際映画祭」でワールドプレミア上映され大盛況だった本作が、いよいよ今月、8月27日(土)よりシネマート新宿・心斎橋 他、全国順次ロードショー。当サイトでは3週に渡って、主演の馬場良馬を始め、中村優一、根本正勝、中村誠治郎、谷健二監督のインタビューを連載中。第三回となる今回は、公開間近の谷健二監督に、本作のロケ地にもなった、asobistサイト編集部にて話を聞いた。
<STORY>
河野敦彦、31歳。職業・プロサッカー選手。強豪チームにクビを言い渡され、古巣の弱小チーム・ジェム千葉に戻ってきた彼は、そこで再起を賭けることにした。移籍の条件は、背番号『10』を付けること。しかし、待っていたのは、「元・日本代表」というかつての栄光をネタにしようとする経営側の考えと、全盛期を過ぎたにも関わらず背番号『10』をもらった彼に対する、若手選手たちの冷やかな視線だった。それでも、河野は黙々と練習を続ける。やがてそんな彼の姿に、ひとり、またひとりと影響を受けるようになっていく ……これは「戦う」ことを選択したひとりの男の、静かな、しかし内なる熱い思いを描いた魂の物語である ――。
尾崎●谷監督は、以前からサッカー好きと聞いていますが、原作に対する思いをお聞かせください。
谷監督▲原作の単行本を読む機会があり、ストーリーが面白く一気に読破しました。ちょうど、次回作の話が出ていたタイミングでもありました。自分がサッカーが好きだったこともあり、この作品を映画化できないかなと考えるようになったんです。漫画を読んでいると、自然と頭の中に映像が浮かんでいました。今までは、オリジナル作品を製作してきましたが、原作のある作品に挑戦した理由のひとつには、新しいキャリアを積み上げたかったという思いがありました。綱本さんが描いている世界感をどのように料理できるのか?そこにチャレンジしようと思いました。
尾崎●映画化にあたって、今回のキャスティングの経緯を教えてください。
谷監督▲キャスティングにおいては、サッカー映画ということもあり、サッカー好きな役者さんを揃えたいと考えました。大杉漣さん、勝村政信さん、平畠啓史さん、女性陣では谷村美月さんにオファーさせていただきました。勝村さんはサッカー番組にも出演されています。メインのサッカー選手には、今まで一緒に仕事をしたことのある気心の知れた中から、馬場良馬さん、根本正勝さん、中村誠治郎さんを選びました。3人は僕の作品で主演を務めた経験もありましたから。中村優一さんは、僕自身のワークショップに参加してもらった経緯もあって、演技力については分かっていましたので、彼を加えてメインのサッカー選手は、この4人にお願いしました。その他のメンバーも、過去に映画や舞台に出演していただいた方々など、一緒に仕事をしたことのある俳優陣だったので安心して本番を迎えることができました。
尾崎●メインのサッカー選手役、馬場さん、中村(優)さん、根本さん、中村(誠)さんは、サッカーの経験がないとお聞きしましたが、サッカーの練習などはいかがでしたか?流通経済大学のサッカー部の練習に参加されたと伺いましたが……。
谷監督▲サッカー映画といっても、今回はJリーガーの物語なので、現実的にそこまでのスキルを持った人っていないですよね。なのでサッカー経験だけで選ぶのではなくて、そのメンタル部分を表現できる役者さんにしようと思いました。流通経済大学は、毎年プロサッカー選手を輩出している大学で、その練習に参加させていただいたことは、技術を学ぶというよりは、メンタルの部分を感じて欲しかったという思いがありました。プロに一番近い選手たちが、どういった気持ちでサッカーに取り組んでいるのか?その気持ちの部分で共感できるものが演技に生きてくるのかなと考えたんです。
また、天皇杯の県予選決勝のロッカールームに馬場さんと中村(優)さんと一緒に参加させていただき、その緊張感を間近で感じ、作品に活かすことができたと感じています。
尾崎●サッカーシーンを含め撮影中でのエピソードを教えてください。
谷監督▲サッカーシーンは、細かく決めて撮影しました。ここは、河野(馬場)が、ボールを取られるシーンとか。全体で3パターンの撮影をしました。後、サッカー経験者としてのこだわりの部分も多かったですね。例えばユニフォームの着方などは、細かく指示を出しました。練習シーンでのコーチのかけ声などもそうです。フィジカルコーチ役の関口アナムさんには、役作りのために流通経済大学の練習に参加して
もらいました。リアルに表現できていると思います。また、主人公の河野のサッカーシーンには、リアリティを出すためにいくつか工夫を凝らしています。サッカー経験者でしかわからない部分ですが、リアリティを追求するためにこだわりました。撮影中はサッカーがしたくてたまらなかったですね。さすがに監督が参加することはできなかったので、撮影が終わってすぐに仲間とフットサルをしました(笑)。
尾崎●主要キャストそれぞれの本作での見どころや魅力、エピソードなどを教えてください。
谷監督▲河野敦彦役の馬場さんは、31歳ということもあり等身大の役です。強豪チームからクビを言い渡され、古巣に戻りそこから決意を新たにして気持ちが変わっていくところの演技を観ていただきたいです。冷やかだった若手選手たちに近づいていくシーンも見どころです。
戸澤敏行役の中村(優)さんは、自分が憧れていた選手が古巣に戻って、納得がいかないところがありながらも河野に巻き込まれ、どんどん河野の魅力に気づいていく部分が見どころです。笠原隆輔役の根本さんは、包容力。何年も前に出ていった選手が古巣に戻ってくることを受け入れるといった、キャプテンとしてチームを統率する懐の深さです。成田剛士役の中村(誠)さんは、現役選手が引退を考えた時の心の葛藤、魂の叫び、本音で話をする、そういったところが見どころです。河野には、登場人物たちの本音を聞き出す魅力があるんです。
山咲佳奈役の谷村さんは、河野というサッカー選手とかかわることで、悩みながらも成長していく部分を観ていただきたい。経験豊かな女優さんです。
平田修役の平畠さんとは、撮影中ずっとサッカーの話で盛上がり、ほっとできた瞬間でもありました。
木村良平役の勝村さんには、脚本のセリフをサッカー用語に直していただいたりしました。サッカー業界ならではの独特の言い回しがあったりするんです。また、勝村さんは、休憩時間に流通経済大学の練習に入っていました。映画の中でサッカーシーンはなかったんですけど(笑)。
竹岡誠一役の大杉さんには、現場でいろいろなことを教わりとても感謝しています。もちろんサッカー話も盛り上がり、現場後に昔出演されていたサッカー映画『仁義なきイレブン』を拝見させていただきました。
本当に、サッカーに囲まれた環境での撮影は、とても充実していました。
尾崎●それでは、最後にメッセージをお願いします。
谷監督▲普通のスポーツ映画やサッカー映画と違うところは、練習を重ねて勝っていくストーリーではないということ。頂点まで達した人物が下り坂の中で、どう藻掻いて生きていくかを描いています。サッカー映画ではなく、サッカー選手の映画です。そういった部分を観ていただきたいです。みなさん、是非劇場までお越しください。
出演:
馬場良馬 中村優一
根本正勝 中村誠治郎 / 岩永洋昭 高崎翔太 富山えり子 / 平畠啓史
広瀬友佑 小笠原健 松浦正太郎 信太昌之 末永みゆ 蛭川信太郎 水木彩也子
谷村美月 勝村政信 大杉漣
監督:谷健二
製作:大澤渡 宇都木基至 菅野征太郎
プロデューサー:麻生英輔 坂岡功士 石山孝紀 赤間俊秀
脚本:佐東みどり
撮影:吉田新時
音楽:洞澤徹
原作:綱本将也 漫画:吉原基貴「U-31」(講談社『モーニング』刊)
主題歌:「原色」ストレイテナー(ユニバーサルミュージック)
配給:トキメディアワークス
配給協力:アークエンタテインメント
公式HP:u-31.amebaownd.com
公開:8月27日(土)よりシネマート新宿・心斎橋 他、全国順次ロードショー
©2016 綱本将也・吉原基貴/講談社/「U-31」製作委員会