第158回 洋楽編 Eric Clapton ――生ける伝説にして、名実ともに世界一のギタリスト

先日、またしてもショックなニュースが飛び込んできました。今年の4月に来日公演を行ったばかりのエリック・クラプトンが、末梢神経障害を患っているとのこと……。末梢神経障害とは、手足の動かしづらさやしびれ、自律神経障害などが起こる病気で、クラプトンはギターを弾くことがだんだん困難になってきているらしいです。記事によると、昨年は1年を通してかなりの痛みがあったらしく、もう良くはならないという現実を理解しなければならかった、とクラプトンは語っています。クラプトンはワールドツアーからの引退を表明しているけど、このことも大きな理由だったのかもしれないね……。


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エリック・クラプトンは、皆さんご存知の通り、ジェフ・ベックジミー・ペイジとともに三大ギタリストに称される世界的に有名なギタリスト。THE YARDBIRDSCREAMなど数々のバンドに参加したのち、ソロアーティストとして活動を始めています。ジェフやジミーとは違って、自身が歌う大ヒットシングルが何曲もあるクラプトン(エリックと呼ぶよりクラプトンのほうがしっくりくる)のことは、ギタリストというよりもアーティストと紹介したほうがいいのかもしれないけど、個人的にはやっぱりギタリストとしてのクラプトンに魅力を感じています。もちろん歌も魅力的なんだけどね。

俺がクラプトンを初めて聴いたのは、中学生になってギターを弾き始めた頃でした。THE BEATLESの『While My Guitar Gently Weeps』のギターソロはそれより前に聴いていたはずだけど、ジョージ・ハリスンが弾いているもんだとばかり思っていたし、はっきりとこれがクラプトン、と意識して聴いたのはその頃。当時はちょうどライヴエイドの放送があったりして、フィル・コリンズと共演するクラプトンを興味津々で観ていたのを覚えています。ただ、まだまだ子供だった俺には少々渋すぎたかな。なんだか凄そうなオジさんだ、とは思ったものの、熱心に聴きこむほどにはなりませんでした。それでも、ギターを弾くならクラプトンを聴け、とギター雑誌には必ず書いてあるし、ジョージ・ハリスンとの関係など、ロック史のあれこれを知ってからは、これが有名な『いとしのレイラ』か……とかね、いろいろと聴いてみたものです。

『Crossroads』
  CREAMはクラプトンだけでなく、
ジャック・ブルース(B,Vo)とジンジャー・ベイカー(Dr)も凄かった。
奇跡のトリオ!
 


そして、そのいろいろと聴いてみた中で、断トツで俺好みだったのがCREAMでした。ソロのクラプトンもいいし、DEREK AND THE DOMINOSだってカッコいいんだけど、ちょっと俺の好みからはレイドバックしすぎな感があってねえ。それに対してCREAMは60年代のロック創世記のバンドとは思えないほど……、いや、だからこそ、なのかもしれないけど、CREAMには緊張感や激しさがあった。この原稿を書いている今、久しぶりにCREAMを聴いているけど、大人になった俺が聴いても、もの凄い緊張感が伝わってくる。やっぱり凄いバンドだ。

……これはあくまで俺の好みであって、偏見でもあるとわかっているけど、クラプトンは70年代半ばにイギリスからアメリカに渡って以降、ブリティッシュロックをあまり感じさせない音楽をやっていると思う。ブルーズが元々アメリカの音楽だということを考えれば、そうなることは自然なことなのかもしれないし、それがクラプトンには合っているとは思うけど、CREAMほどの凄みを感じなくなった……なんて言うと、熱狂的なファンの方に怒られるかしら。大ヒットしたアンプラグドバージョンの『いとしのレイラ』や、超が付くほどの名曲だとは思いつつも、大ヒットした『Tears in Heaven』なんかには物足りなさを感じてしまう。

『いとしのレイラ』
 フィル・コリンズと共演したライヴエイドの映像。
 中学生の頃、録画したビデオを何度も観て
 独特なやり方のヴィブラートを真似しました。
 


ただまあ、そんなことを言いながらも、06年に観た来日公演では鳥肌が立つほど感動してしまったんだけどね。艶のある滑らかトーン、確かなテクニック……生ける伝説を目の当たりにして、興奮しっぱなしでした。当時のメンバーのデレク・トラックスのギターが素晴らしかったこともあって、クラプトンのフレージングは目新しさがないなんてことを、偉そうにほんの一瞬だけ思ったりもしたけど、考えてみれば、世に溢れるエレキギターのフレーズは、そのほとんどがクラプトンたち三大ギタリストのフレーズが元になっているんだと思い当たり、震えがくるほど感激した。

今年の来日公演でも、71歳という年齢になってもなお、あの素晴らしいギタープレイは健在だったと聞く。クラプトンほどのギタリストがギターを弾けないということは、どれほどの苦痛だろうか……。軽々しく言えることではないけど、今年亡くなったキース・エマーソンのように、病気のせいで指が動かなくなってしまったことを苦に死を選んだりしませんように。病気が良くなりますように……。

『While My Guitar Gently Weeps』
 親友ジョージ・ハリスンとの共演……と思ったら、
 リンゴ・スターにフィル・コリンズ、ジェフ・リン、エルトン・ジョンまでいるじゃん!