12月5〜11日、バレンシア市のルサファ(Ruzafa)地区で子供向けイベント"Ruzafa Loves Kids"が開催された。
フォトショップで開かれたイベント。
子供たちは紙でサンタクロースの髭や帽子、
マスカラなどの「小物衣装」を自作イベントが行なわれたRuzafa地区はアーティスティックで個性的なお店が立ち並び、15年ほど前から家族世帯が劇的に増えている人口増加が顕著な新トレンディーエリア。にも関わらず、地域の子どもを受け入れるのに充分な数の公立学校設立が間に合っていないことが議論を呼んでいる地域でもある。そのような背景のなか「行政の学校設立には時間がかかるが、子供たちに楽しいイベントを用意するのは自分たちですぐにできる!」と、スタイリッシュな子育て用品店で知られるnANUFACTUREが音頭を取り、Ruzafa地区にある40以上の商店や親たちが協賛、協力して実現したのが今回のイベントだった。
自作品とともにプロによる写真撮影。
雰囲気も本格的!
「スーパーマンになろう!」
この日は地域中の子どもがマントに(笑)地域が結束したイベントだけあって参加店舗の顔ぶれは実に様々。普段は子供と縁がなさそうなバーもチョコレートケーキを作るクラスを開いたし、ピザ屋でもオリジナルピザ作りクラスを開催、フォトショップも「スタイリストになろう」と子供たちに帽子や髭などを紙で作らせ「次はモデルにもなろう」と自作品とともにプロによる写真撮影をする、という粋なアイデアで参加。洋服屋では期間中に店舗を訪れるとクレープをプレゼント。オーガニック喫茶店でもベイビーマッサージやダンス、お話会、フェイスペインティングを行なった。
このように各店舗ができる範囲で協力し、地域の力で大成功したイベントとなった。期間中この周辺を歩いている子どもたちはみんな"Ruzafa Loves me"のロゴがついた黒の風船を手にしていたが、それがこのイベントがどんなに盛況したかを物語っていた。
ところで、スペインといえば欧州のなかでもチャイルドフレンドリーで知られている国。このような子供向けのイベントなど珍しくないと思われるかもしれない。しかし、筆者がバレンシアに住み始めて驚いたことのひとつは、「日中は子どもを見かけない」だった。どういうことかというと、スペインでは共働きが普通で、ましては近年の経済危機で共働きでないとやっていけない家庭が多く、子どもたちは一日中グアルデリア(幼稚園・保育園)に預けられるパターンが多いのだ。日中、子供を見かけたとしたら多くが祖父母に連れられているのもそれで、だ。
というわけで子供向けイベントも週末かグアルデリアが終わる6時以降でないと開かれず、週日の日中に子供と一緒に参加できるイベントがほとんどないのだ。余談だが、アルゼンチンやイギリスで毎日のようにアクティビティに息子と参加し、子供は子供の友達を作り、私は私で友達が作れる機会が常にあった筆者には、このバレンシアの子育て環境は少しばかり困りものでもあった。ただ今回のことで、少数派ながらも日中に子供と参加できるアクティビティがもっとあればいいなあと願う親や祖父母の思いが顕在化した気もした。
今回のイベントの率先役「nANUFACTURE」で開かれたイベント。
「壁一面を子どもたちの絵で飾ろう!」さて、イベントへの参加は無料のものも有料のものもあった。でもここでの買い物は心温まるものだった。というのも、例えばピザ作りで払った5ユーロのうち2ユーロは病気の子供たちへの寄付に回されるなどの仕組みが盛り込まれていたからだ。両親や友達と遊んだ思い出とともに、誰かを助けたかもしれない嬉しさ。子供たちの小さい手で「買った」ものは決して小さくなかったはずだ。