タパス祭りでスペインの食を満喫

昨年スペインへの引っ越しが決まって以来、楽しみのひとつは、バルをはしごしてタパスを食べまくることだった。


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フランスパンの薄切りに乗っているものや、
パイ生地に乗っているものなど、
タパスのスタイルも様々

タパスとは言わずと知れたスペインの小皿料理。大学時代ドイツに住んでいた筆者は、人の気質が好きで、食事が美味しいスペインを何度も訪れた。まだスペインがユーロではなくペセタを使っていた時代のことだ。バルに入ってドリンクを注文すれば自動的にタパスが出されるスタイルが日本の居酒屋みたいで気に入ったし、ワンドリンクのあとはすぐに次のバルへ移動し、一夜に数件のバルをはしごする体力全開のスペイン人に若き日の少女は圧倒されたものだった。

それから10年以上経ち、今度はスペイン(バレンシア)に住むことになった。思い出を追体験とばかりバレンシアでタパス屋に入ったが、一向にタパスは出てこない。「スペインのなかでも、タパスがドリンクについてくる地域と別注文の地域があるとは聞いていたが、バレンシアは後者なのか」と思い直し、カルタ(メニュー)をチェックする。が、タパスの値段が非常に高い。スペインが今はユーロを使っていることを肌で感じた瞬間だった。加えて、バレンシアのタパスは大皿で、多種類を注文しにくい。後でわかったのだが、パエージャ(パエリアですね)発祥の地であるバレンシアでは、タパスで軽くつまむよりはきちんとテーブルについて食事をしましょうという傾向が強く、タパス文化があまりないとのことだった。



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チーズやチョリソにフルーツソースが絶妙なコンビ


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チョリソとウズラの卵のタパと鰻の稚魚アングラスもどきタパ

少しがっかりした筆者だったが、そんな矢先、バレンシア・フェリア・デ・タパ(バレンシアでのタパス・フェア)が開催されることを知った。そのとき2回目となるバレンシアのタパス祭りは、F1ヨーロッパGPの舞台にもなっているフアン•カルロス1世ロイヤルマリーナを会場とし開催された。


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最終日にはタパのコンテストも

ヨットと海が見える最高のロケーションで開催されたタパス祭りには25店舗のレストランが出店し、各スタンドが3種類の創作タパスを披露した。マッシュポテトとたこにパプリカとオリーブオイルたっぷりがけのタパ。一切れのパンにスペイン産チョリソの薄切りとウズラの卵を乗せたタパ。ワインで煮込んだチョリソ乗せタパ。バター風味の小イカフライがのったプンティジタスと呼ばれるタパ。サーディンのオリーブオイル漬けタパ、鱈のコロッケ乗せタパ……などなど。値段はビールもタパも一品1.2ユーロ(約128円)。非常に良心的な値段で、とにかく美味しかった。最終日の夜はタパコンクールも開催。投票でナンバーワンのタパも選出され、会場も大盛り上がりだった。
筆者にとっても、バルのはしごというよりは会場内での各スタンドのはしごとなったが、タパス祭りのおかげで多種類の美味しいタパスをたらふくいただけ、大満足。スペインの食文化の奥の深さを再認識した夜になった。