10月20 日、南青山のギャルリーワッツで、えんどう もみさんの個展が開かれているのを聞きつけ、取材に出かけた。久しぶりの青山界隈。原宿駅から表参道を歩いていくことに決めた。表参道のけやき並木は少しだけ秋の気配。
若者で賑わう通りを歩く。かつて流行発信基地だったセントラルアパートはすでにGAPのビルになり、修学旅行の高校生などもカメラを片手にグループ行動をしているらしい。表参道には、おなじみのブランド店が並び、ディスプレイを競う。
腹が減っては取材もできぬということで、ひときわ目を引くヨーロッパスタイルのANNIVERSAIREで食事をすることにした。ここは、若者たちの間では通称アニバーサリーカフェと呼ばれているらしい。正確にはアニヴェルセルと読むらしいが・・・。
ギャルリーワッツは、地図をたよりに探す。どうやら、青山通りを真っ直ぐ突き抜けプラダの角を右に曲がる。ということで、プラダを目指して歩いた。無事プラダ発見。なんてビル!遊びすぎ。でも、面白いかも。
無事、ギャルリーワッツのあるラポール南青山に到着。そしてここでもびっくり。階段を上がると普通のマンションのはずが、どのドアも開け放たれていて、どの部屋も小さなブティックになっている。これは青山だからできること、普通の住宅街ではとてもできないハナレワザだ。
ギャルリーワッツの主、川崎淳与さんに迎えられ、もみさんの作品を拝見する。作品は実にユニーク、かつ美しい。釣り糸を染めてそれにビーズやスパンコールなどを配置し、それが見事な作品になっている。アクセサリーを超えたアクセサリー。風に舞い、動きに揺れる。
もみさんの作品は実に多彩。ピアス、指輪、ブローチなど。しかし、ナイロンのチュ?ルで作られたシンプルなドレスとテグス(釣り糸)で編んだビーズやスパンコールのゆらめきは、高価な宝石に勝るとも劣らない。
「ダイヤや真珠も使います。でも、それがダイヤだから使うのではなく、あくまでも素材として適しているから」
もみさんに話を聞いた。
「テキスタイルデザインをやめたわけではなく、テキスタイルデザインの環境が大きく変わってしまったのです。中国や韓国から安く大量に輸入されるようになり、日本の市場を席捲してしまったのです。わたしはアクセサリーだけをやりたいというのではなく、コスチュームをトータルに捉えて、創作していきたいと考えています。でも、いつ気が変わるかはわかりません。来年は靴のデザインをしているかも知れないし・・・何もしていないかも知れない」
ふっと笑いながらつぶやく。絶対自分に枠ははめないぞという固い意志のようなものが伝わる。
幼いころから物作りが好きだった。いつも何か作っていたという生まれながらのアーティストだ。
もみという名は、ハワイの言葉で真珠という意味。名付け親のご両親のセンスの良さにも関心する。
おそらく、アーティストとしてクオリティーの高いDNAと恵まれた環境、そして、ギャラリーを経営する川崎淳与さんのプロデューサーとしてのきびしい注文などが、さらにもみさんを大きくしていくことだろう。 まさに、素材を遊ぶ、あそびすと。
【プロフィール】
幼稚園から大学まで玉川学園で学ぶ。
玉川大学美術専攻染織科卒業。
テキスタイルデザイナー、プランナーを経て、 1998 年独立。
有限会社リュウテキスタイル設立。
現在コスチュームアクセサリー作家として活躍。