T2 トレインスポッティング

t2trainspotting_001.jpg 90年代、ポップカルチャーの代名詞となった『トレインスポッティング』。その後20年という長い長い時を経て、続編として帰って来た本作! 主演のユアン・マクレガーはもちろんのこと、ワル仲間であるジョニー・リー・ミラーもユエン・ブレムナーもロバート・カーライルも、監督のダニー・ボイルも、脚本のジョン・ホッジも、原作のアーヴィン・ウェルシュも……と、当時の主要キャスト・スタッフがすべて集結。あの頃は若々しい青年だったアイツらも今や老け顔の中年オヤジとなり、懲りない青春が再び幕を開ける……のか?!

スコットランドのエディンバラ。20年ぶりに故郷に戻ってきたたレントン(ユアン・マクレガー)。だが、彼の不在中に母親は永眠し、実家で暮らしていたのは父親ただひとり。当時の仲間、ベグビー(ロバート・カーライル)は、殺人の刑で刑務所暮らし。シック・ボーイことサイモン(ジョニー・リー・ミラー)は、表向きはパブ経営、裏ではゆすりや売春で金を稼ぐ日々。スパッド(ユエン・ブレムナー)はカタギの仕事を遅刻でクビになり、家族にも愛想をつかされて独り暮らし。予想通りダメ人間街道まっしぐらな彼らだったが、その再会により、新たな物語が疾走を始める……!

t2trainspotting_002.jpg 懐かしいメンツが一堂に会し、あの頃の“続き”をおっぱじめる。20年のブランクを経て、中年同士が、シワの増えた懐かしい顔を突き合わせる。要所要所で挿入される、当時の回想シーン。監督が前作と同じだからこそなしえる、ニクい演出。これがまた懐かしいったらありゃしない。この感じ……、そう、これはあれだ、まるで同窓会だ。個人的な話だが、私なんかも例にもれず、何年か前の同窓会をきっかけに当時の友人たちと最近よく飲みに行くようになった。大人になってからのゴタゴタをすっ飛ばし、当時のまだ若いまま、青いままの思い出だけで彼らと会うものだから、外見は老けているが中身は当時の意識、という不思議な感覚で酒を酌み交わしている。さながら、あの懐かしい頃にタイムスリップしたかのように。

だが本作は、前作の終盤に究極のゴタゴタがあったものだから、その再会は「嬉しい、楽しい、キャー♪」というわけにはいかない。むしろ、あのゴタゴタからの続きから、新しい物語が走り始める。ワルになった中年オヤジどもが、前作のあの顛末に決着をつけようとする。この始まりからして、本作がただ事では済まないことを早くも予感させる。「あの顛末って?」と思った方。本作は前作の完全なる続編であるため、前作を観ていないと何のことやらピンと来ない。未見の方は、1作目をご覧になってからの鑑賞を強くお薦めする。ちなみに、公式サイト等でのあらすじにも前作のネタバレが含まれるため、読まないに越したことはない。

20年といえば、一人の人間が赤子として生まれて落ち、成人にまで至る年月。その年月で、彼らは“大人”になったのか? 私の答えは「YES」だ。この場合の“大人になる”とは、品行方正で人畜無害の健康優良児になることではない。ワルはワルなりに、ダメ人間はダメ人間なりに、型破りは型破りなりに、たとえレールを外れても“幸せ”の道はあるという意味での「YES」なのだ。

原作:アーヴィン・ウェルシュ「T2 トレインスポッティング」、「トレインスポッティング」(ハヤカワ文庫)
監督:ダニー・ボイル
脚本:ジョン・ホッジ
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ケリー・マクドナルド、アンジェラ・ネディヤコバ、アーヴィン・ウェルシュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:t2trainspotting.jp
公開: 4月8日(土) 丸の内ピカデリーほかにてロードショー