森田醤油「三年成熟生醤油 しぼりたて」 物語2

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p3.jpg 奥出雲町三成の春はゆっくりやってくる。「桜はさあね、2、3輪ほど咲いてますかいねー」
森田醤油店から川を挟んだ対岸を眺めながら「ゆっくりお花見する時間もない」と店主の森田さんはいう。

松江や出雲でソメイヨシノが満開の4月初旬。同じ島根県内でも、むしろ広島県との県境にほど近い山間の三成では、中心を流れる斐伊川の土手の桜の固いつぼみもようやくほころび始める。

日中の空気はぬるんできたものの、朝晩の冷え込みはまだまだ厳しい。麹を仕込むのに最も適しているこの時期はまた、一日一日の天候が思いもかけず変わりやすい季節柄でもある。

「毎朝起きるとまず、外に出てお天気の具合をみます」

ちょっとした気温や湿度の差は麹のできを左右する。その麹のでき具合で醤油の味に微妙な違いが出る。旨い醤油に仕上がるかは麹のよしあしにかかっているのだ。
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p5.jpg 大豆の洗い→侵漬→蒸し→冷却と同時進行の、小麦の炒り→割砕の工程。それを経て、ようやく種麹とそれらを混合し製麹に入る。この時に、ちょうどいい気温・湿度の日和とタイミングが合うかを気にしながら作業が行われるのだ。この仕込み作業は4月末から5月はじめまで続く。

「今年もいい麹ができそうです」
と森田さんはにっこり。

やがて熟成した樽を開ける「生醤油・しぼりたて」の香りが蔵に広がる瞬間。様々な苦心・苦労を全て忘れ、森田さんは喜びに満たされる。

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