第164回 洋楽編 JEFF BECK―― 常に進化し続ける孤高の天才ギタリスト

jeffbeck0913.jpg前回のCHEAP TRICKのときにチラッと書いたクラシックロックアワードですが、CHEAP TRICKだけでなく、ジェフ・ベックジョー・ウォルシュリッチー・サンボラオリアンティなどの錚々たるメンツが出演するようで、とても気になっています……が、チケットがなかなかのお値段でねえ。10月には日本最大のメタルフェス、ラウドパークもあれば、それに出演するアーティスト達の単独公演もあって、全部行けるわけではないし、みんなちょっと日本に来すぎだろ! と嬉しい悲鳴をあげているところ。それでもジェフ・ベックは久しぶりに観に行きたいなあ……というわけで、今回はジェフ・ベックをご紹介! 自分でも意外だったんだけど、ジェフ・ベックは今回が初登場なのでした。

ジェフ・ベックは65年にエリック・クラプトンの後任として加入したTHE YARD BIRDSでデビュー。高度なテクニックと斬新な奏法で一躍トップギタリストの座に就く。THE YARD BIRDS脱退以降は、自身の名を冠したJEFF BECK GROUPや(ロッド・スチュワートロニー・ウッドらが在籍した第一期と、コージー・パウエルらが在籍した第二期がある)、カーマイン・アピス、ティム・ボガートと組んだBECK, BOGERT & APPICE等のバンドを経て、以降はソロアーティストとして活動。今年の7月にはニューアルバムを発表し、70歳を超えた今も精力的に活動を続けています。

俺が初めてジェフ・ベックを聴いたのは中学生のころで、ギター雑誌なんかに「ギターキッズ必聴!」なんて書いてあったのを読んで、興味を持ったからでした。ただ、当時ちょうど発売されていたアルバム『Flash』にファンだったロッド・スチュワートが参加していると聞いて嬉々として聴いてみたものの、ロッドが歌う『People Get Ready』以外はあまりピンと来ず。今にして思えば、『Flash』はベックの作品の中ではあまり出来が良いほうではないし(本人も気に入っていないとか)、ロック初心者だった中学生が気に入らなかったのもいたしかないと思う。名盤『Blow By Blow』 やそのほかのソロアルバムにしても、歌ものロックを好んで聴いていた俺には
、1〜2曲ならまだしも、アルバム全編が歌のないインストゥルメンタルというのは少々敷居が高くてね。それでなんとなくベックに苦手意識を持っていた俺は、歌の入っているJEFF BECK GROUPやBECK, BOGERT & APPICEにも手が伸びずにいたのです。

『Led Boots』
 わたくしのフェイヴァリットソングです。
この動画の時期のツアーに参加した女性ベーシスト、
タル・ウィルケンフィルドのキュートさが話題になったけど(なんと当時21歳!)、
ベックと共演するぐらいだからね。
その実力は折り紙つきです。
 


ところが、89年発売の『Jeff Beck’s Guitar Shop With Terry Bozzio and Tony Hymas』を聴いて、そんな苦手意識はどこかに行ってしまった! ジャンルを超越したユニークな楽曲に乗るベックのギターはまさに変幻自在で、一瞬たりとも飽きることがない。ヴォーカルが入っていなくてもギターがそれ以上に歌っていて、歌ものロック好きの俺にも十二分に響いてくる。ピックを使わずに指と爪で奏でられる艶のある音色や、トリッキーかつメロディアスなフレーズは、それまで聴いたことがないような独創的なものだったし、ベックってこんなに凄いのね……と、ようやく気付いたのでした。それからは遡って過去の作品も聴くようになったけど、まあ、『Blow By Blow』なんかは70年代の作品だし、中学生の俺には少々古臭く聴こえたのかもね。

『Where Were You』
 ギター・ショップに収録されたこの曲には衝撃を受けました。
なんという表現力!
 


ジェフ・ベックの凄いところは、やはり、常に進化し続けているところだろう。成功したスタイルに固執せず、アルバムが出るたびに違うことを始めるといっていいぐらい、アルバムごとにカラーが違う。これはもう、THE YARD BIRDS以降ずっとで、ブルーズ、ロック、ジャズ・フュージョンから、テクノやエレクトロニカといったギターとはあまり相性のよくないはずの電子音楽まで取り入れている……とはいっても、ベックのギター自体が大きく変わるわけではないし、バックのアレンジが変わっているだけ、と感じる人もいるかも。何を弾いてもジェフ・ベックにしか聴こえないから……って、どちらにせよ凄いんだけど。

『Live In The Dark』
 ニューアルバムから。
これはモダン・ブルーズといった趣の曲だけど、
アルバムにはもっとアップデートされた現代的な曲も収録。
ぜひ聴いてみてください。
 


今年7月に発売されたアルバムにはBONESなるバンドのシンガー、ロージー・ボーンズとギタリストのカーメン・ヴァンデンバーグという2人の女性が全面的に参加しており、これがものすごく今どきのガレージバンドっぽいサウンドで、かなり驚いてしまった。インストゥルメンタルの曲以外は、BONESがベックのアルバムに参加したというより、ロージーの貢献度の高さもあって、BONESのアルバムにベックが参加したといってもいいぐらいの印象だ。しかも完璧にマッチしているから凄い。ベックに驚かされるのはいつものこととはいえ、今回の衝撃はかなりのもの。70歳を超えて、いまだ新しいことに貪欲なジェフ・ベック……、カッコいいなあ。

※ジェフ・ベックの単独来日公演が決定しました!
詳しくはこちら

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/