第171回 洋楽編 JOURNEY――果てしない旅路の先に……産業ロックとはネガティヴな言葉にあらず

先日開催されたクラシックロックアワードですが、なんだか問題になっているようですねえ。ジェフ・ベックと日本初のセッションが行われるかのように報じられていたジミー・ペイジが、全く演奏はせずにプレゼンターとして登場、これに怒った一部の観客が返金を求めたものの、主催者側は返金には応じず、責任転嫁をするかのような謝罪文を発表し、観客の神経を逆撫でした、だのと騒ぎになっているようです(現在は返金に応じるとのコメントがHPに記載あり)。本当に豪華な出演陣だっただけに、こんな風にミソが付いちゃったのは残念でした。さて、今回ご紹介するのは、来年2月に来日の決まったJOURNEY! 75年にデビューした彼らもまた、クラシックロックに分類されるであろう大御所です。

journey161114.jpgJOURNEYはSANTANAで活動していたニール・ショーン(G)と、グレッグ・ローリー(Key)が中心になって結成されたアメリカを代表するロックバンド。産業ロック(いわゆる売れ線狙いのバンドのことだけど、少々皮肉込み)とも呼ばれたキャッチーでメロディアスなサウンドが特徴で、本国アメリカを中心に世界中で人気を博しています。中心メンバーが元SANTANAという経歴もあってか、インストゥルメンタル曲が中心のプログレッシヴロック系のバンドとしてスタートするも、商業的には成功せず。JOURNEYが世界的なバンドとして認知されるのは、“黄金の声”こと、シンガーのスティーヴ・ペリーが加入して以降のことでした。

俺がJOURNEYのことを知ったのはいつ頃だったかなあ。『Separate Ways』のイントロを聴いて、当時流行っていたTHE ALFEEの『メリーアン』みたいだと思ったのを覚えているから、その2曲がヒットしていた83年頃かもしれない。ただ、その頃の俺はDURAN DURANなんかのイギリスのニューウェイヴに夢中で、JOURNEYの大らかなアメリカンロックには特に惹かれず……。PVも驚くほどカッコ悪かったしね。そんな俺がJOURNEYに興味を持ったのは、あの『We are the World』でのスティーヴの歌唱を聴いてからでした。スティーヴはマイケル・ジャクソンスティーヴィー・ワンダーといった錚々たるアーティストかつ、ポップス寄りのメンツが揃ったなか、ハードロックに分類されるジャンルからただ1人参加し、ソロパートまで担当。アメリカを代表する名シンガー達と対等以上に歌い上げるその姿は、実にカッコよかった。あの歌声を聴いて、この人が歌うJOURNEYってバンドを聴いてみたい、と思ったんだよね。

『Separate Ways』
結局この曲がいちばん好きかも。しかしPVはダサい……
 


そして、改めて聴いてみたJOURNEYは、メロディアスでソウルフルなスティーヴの歌声を、ドラマティックな演奏で盛り上げるとんでもなくカッコいいロックバンドで、ずいぶんと俺好みのサウンドだったのでした。しかし、産業ロックとはよく言ったもので……、これは先に書いたように売れ線狙いのバンドを揶揄する言葉でもあったわけだけど、肯定的に受け取るならば、産業になり得るほど完成度の高いロックだったとも言えるわけでね。その意味で言えば、JOURNEYはまさに産業ロックだっただろう。でも、確かな技術を持ったミュージシャン達が、一般のリスナー達にも伝わるようにわかりやすい楽曲をプレイしていたことの、いったい何が悪いのか。それって凄いことだと思うんだけどな。

『Faithfully』
JOURNEYのバラードといえば、
『Open Arms』を挙げる人も多いだろうけど、俺はこっち。
 


70年代から80年代にかけて大成功を収めていたJOURNEYは、メンバーの脱退やスティーヴの体調不良などが原因で、86年から10年間もの長きに渡って活動休止。96年の復活アルバムのセールスは好調だったものの、またしてもスティーヴの体調不良により活動休止に陥り、そのままス
ティーヴは脱退してしまう。その後、新しいシンガーが加入するも、スティーヴが抜けた穴は埋められず、バンドは苦戦を強いられる。しかし、ニールがYouTubeで見つけたという、フィリピン人シンガーのアーネル・ピネダが加入したことで、バンドは息を吹き返す(この辺のことはロック映画編で詳しく書いているので、ぜひ読んでみてね)。無名のフィリピン人がJOURNEYへ加入したという、アメリカンドリーム的な話題もプラスにはなっただろうけど、アーネルの加入がベテランメンバー達にも良い方向で作用したようで、アルバムも良い出来だったし、スティーヴ脱退以降では最高のセールスを記録、JOURNEYは完全復活を果たした。

『Don’t Stop Believin’』
往年の名曲をアーネルバージョンで。素晴らしい!
 


アーネルが加入して、来年で10年になる。国籍や人種の違いもあり、あまり長続きしないのでは、とも思っていたけど、そんな心配はもういらないだろう。アーネルはたしかにスティーヴによく似ているけど、彼なりの個性をしっかりと持った素晴らしいシンガーだ。来日公演はもちろん観に行きます! レポートをお楽しみに。スティーヴも活動を再開したようだし、今後も両者の活躍に期待したい。JOURNEYの旅はまだまだ終わらない……。

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/