第181回 洋楽編 Generation Axe – A Night of the Guitar ―― 5人のスーパーギタリストによる奇跡の饗宴!

前回ご紹介したLAメタルサミットの開催中止が発表されました。公式サイトには主催者の都合とは書いてあるものの、具体的な説明は一切なし。LAメタルサミット以外に予定されていた出演者たちの単独公演まで中止になってしまったし、いったい何があったのか……。ほんとに残念です。そんなわけで、今回は前回予告した出演者の紹介ではなく、先日行われた凄腕ギタリスト達の饗宴、「Generation Axe – A Night of Guitars – 」のレポートをお送りします!

generationaxePH.jpg Generation Axeは奇才スティーヴ・ヴァイが主宰の、スティーヴ、イングヴェイ・マルムスティーンヌーノ・ベッテンコートザック・ワイルドトーシン・アバシというテクニカルかつ個性的なギタリスト達が代わる代わる登場し、時には一緒に演奏もするというイベントです。昨年アメリカで開催されたツアーの大好評を受け、アジアでもツアーが行われる運びになったとのこと。東京開催の2日間はどちらも予定があったので、今回は泣く泣く見送るつもりだったんですが、やはり見逃すわけにはいかない! と、なんとか間に合いそうだった4月6日の木曜日、大急ぎでZEPP東京へ向かいました。

当日券を購入して会場に入った時にはすでにライヴが始まっており、残念ながら5人が共演したというオープニングは観られず、トップバッターのトーシン・アバシのステージから観戦。トーシンのことはよく知らなかったし、ライヴを観るのは当然初めてだったんだけど、まあ、凄かった。そもそも変拍子で難解な曲を演っているのに、さらにとんでもなくテクニカルなプレイを涼しい顔をして弾きこなすんだよね。無機質というか、硬質なイメージのあるダークな楽曲もカッコいい。しかし、観客達はやっぱりノリにくかったのか、盛り上がるというよりは固唾を呑んで見守るといった感じ。トーシンの「ヌーノサン!」という呼びかけでヌーノ・ベッテンコートが登場して、トーシンのバンドANIMALS AS LEADERSの『Physical Education』を2人でプレイ、ようやく通常のライヴのような盛り上がりに。

ANIMALS AS LEADERS 『Physical Education』
こんなの聴いたことがないかも……。時代は変わります。
 


トーシンはそこでステージを降り、バックメンバーはそのままでヌーノのステージが始まった。「俺はシンプルな曲をやるよ!」と客席の笑いを取ったあと、EXTREMEの『Get the Funk Out』をヴォーカルも取りつつプレイ。いきなりの人気曲の登場に、客席は大盛り上がり! しかし、ヌーノはシンプルな曲だなんて言っていたけど、構成がシンプルなだけで、音数も多ければ難易度も高い。こんなの弾きながらよく歌えるなあ。速いフレーズでも驚くほどクリアーに聴こえるし、この人はやっぱり上手い! 『Midnight Express』やEXTREMEのメドレーでヌーノのセットは終了、ジョークを交えてザック・ワイルドを呼び込む。そして、2人でプレイしたのはシティズン・コープの『Sideways』。ヌーノがこういうブルージーな泣きのギターを弾くのは珍しいかも。2人のソウルフルな歌も素晴らしかった。

ヌーノ・ベッテンコート 『Midnight Express』
名手ヌーノによるアコースティックピース。凄いなあ。
 


ヌーノがステージを降りると、ザックは「これぞザック!」というゴリゴリのマシンガンピッキングで客席を圧倒、そのままBLACK SABBATHの『N.I.B.』に雪崩れ込んだ。ザックのヴォーカルは相変わらずオジー・オズボーンにそっくり! そんなに弾くかねと呆れるほど弾きまくるザックは、昔よりもさらにゴツくなっている印
象。雄叫びを上げながら両手の拳で胸を叩く姿はまるでゴリラ……。しかしまあ、プレイはもちろんのこと、ザックはそのワイルドなキャラクターも愛されているんだよね。何をやっても絵になるし、カッコいい。ザックがプレイしたのは『N.I.B.』にジミ・ヘンドリックスの『Little Wing』、THE ALLMAN BROTHERS BANDの『Whipping Post』の3曲。ザックらしい選曲ではあったけど、オジーの曲やPRIDE & GLORYの曲も聴きたかったなあ。

ザックの後はイングヴェイだよね? ザックとイングヴェイの共演なんて凄い! と、期待していたんだけど、ザックが「エイリアン・シークレット!」と、ステージに呼び込んだのはスティーヴ・ヴァイ。アメリカではスティーヴがトリだったようだけど、日本ではイングヴェイの人気が断トツだからメインを譲ったのかな。残念ながらザックとスティーヴの共演はなく、そのままスティーヴのステージが始まった。正直に告白すると、俺はスティーヴのWHITESNAKEでのプレイが苦手で、それ以降あまりスティーヴの作品を聴かずにいたんだよね。しかし、90年のWHITESNAKE以来、久々に観たスティーヴはやはり凄かった。一発でスティーヴだとわかるトーン、複雑なのにキャッチーな楽曲、ショーマンシップ溢れるパフォーマンス……。知らない曲ばかりでも(おそらくファンにはお馴染みの曲だったはず)、十分に楽しめるステージでした。そして、いよいよ御大イングヴェイ・マルムスティーンの登場!

赤い照明とマーシャルの壁を背に、イングヴェイは唯一無二のギターを弾きまくる。しかし、機材にトラブルがあったのか、ステージ袖に文句を言ったり、ステージからいなくなったり……。プレイには以前ほどのキレが無かったし、バックバンドと噛み合ってない気もした。バックバンドはイベントを通して同じメンバーで、他のギタリストの時にはそうは思わなかったから、やはりイングヴェイの音がデカ過ぎて他の音が聴こえない……とか、そういう問題があったんじゃないかな。それでも、スティーヴとの共演が実現した『Black Star』は素晴らしかった! 大げさじゃなく、本当に鳥肌が立ったよ。ゾクゾクした。

イングヴェイ・マルムスティーン&スティーヴ・ヴァイ 『Black Star』
素晴らしい! こうやってきちんと他のギタリストと一緒に演奏するイングヴェイを観るのは始めてかも。
そして、それがスティーヴ・ヴァイなのがまた凄い。
 


エンディングはイングヴェイをのぞく4人で『Frankenstein』、イングヴェイも含めての『Highway Star』で大団円(トーシンの“ぼっち”感が切なかったけど)! セットチェンジによる休憩もなく、5人のギタリストが3時間を超えて弾きまくるライヴには少々疲れはしたものの、これほどのメンツが集まることはそうないだろうし、無理して来た甲斐がありました。主宰のスティーヴ・ヴァイに感謝! しかし、終わってみればイングヴェイの印象が強烈過ぎて、他の出演者達の印象が薄くなってしまったという。あの人やっぱり凄いね……。

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/