海堂街道? を烈風の如くひた走っておりまする。
さて本作は時系列からいうと、バチスタ完結シリーズの華麗なる崩壊三部作「螺鈿迷宮」、「ケルベロスの肖像」、「輝天炎上」からは幾ばくか遡上することになる。
だいいち表題から伺えばバチスタシリーズとは無縁かと憶測したりする。案の定読み始めてみれば「ここいらで、ちょっくら一休みもいいかもしれん」などシリーズからの解放感さえあり、休息を与えられたような気もする。
ところがどうして、そうは問屋が卸さない。
いやいや面白いことは言うまでもないが、布石として置かれた第一主題を読み越し、第二主題に突入すると、もうもう著者の雄弁は止まるところを知らず、読者はページを繰る手ももどかしい。
前につんのめらんばかりに第三主題に道を分け進むと、三つの主題はそれぞれアメーバのように見る間に触手を伸ばし、やがて結び、融合の果てにひとつに帰結する。
驚くべきかその果実は、崩壊を予測して土中深く埋め込まれ、従って焦土の下にあってなお、バチスタ完結シリーズの新たなる芽吹きを準備して、虎視眈々と地上を伺っている。
どんな大樹が誕生するのか、なんだか面白いことになりそうな期待感なのだ。
恐るべき作家。遠大なる海堂パンデミックス的物語増殖拡散構想。
ますます、惚れてまうやん!
作者名:海堂 尊
ジャンル:ミステリ
出版:新潮社