とにかく吾輩はご機嫌である。
本書は大層、面白かった。
より何より「面白い」と思った作品の著者作を手にするのが本作が最初であり、ということはつまり、これから面白い作品に山盛りで会える可能性が大だということが、それは心躍ることに他ならない。
「面白い」作品を見つけると、手当たり次第に同著者作を読みあさる読書癖をもつ者にとってもっとも忌むべきは同著者作の読破であり、次作刊行を待つか、新たに「面白い」と思える作品群を持する作家を見つけ出すかしない限り「読むものがない」真空状態の所在なさに他ならない。
この度見出した「面白い」作家は新進気鋭と見えて、さほど多くの作品群を持していないようだが、本作によってまったく新しい「面白い作品」をものする作家を見出した気がしているわけで、既刊の数作をじっくり、ゆっくり読み進める間に、勢い余りある腕をブンブン振り回して、ぜひとも次作をものしてもらいたいと願ってやまない。
表題「教場」は警察官を育て上げる学校・警察学校を指している。
第一話から第六話までとエピローグ、それらは最初、オムニバスの一篇ずつかと思わせたりする。突然終わってしまったエピソードの前に、しばし呆然自失し、次に読み進める勇気とエネルギーを溜め直さねばならないのかと躊躇する。
が、どうして……
6プラス1は、実はしっかりと繋がり合い、警察学校98期生の入校から卒業までを構成し、教場は100期へと手渡される。
普通窺い知ることのない警察学校内の様子、その教育課程の興味深いこともさることながら、織り込まれたプチミステリーが、なかなかにピリッとスパイシー。学園ものであり、警察ものでミステリーでもある、まさに一度で二、三度美味しい絶品なのだ。
読み始めて第一話を終えるか終えないかのうちに、某Amazonとかで検索し、同著者作の注文を入れてしまったとしても、決して驚いたりはしない。
大歓迎! 同志同癖の同属也や!!!
作者名:長岡 弘樹
ジャンル:ミステリ
出版:小学館