極北ラプソディ

うむ。登場するのは「知った」人物ばかりなんだが。表題から推して知れるように「極北クレーマー」のコンティニューには違いないが、意外なところで「モルフェウスの眠り」よりは前だとわかり、「ジェネラルルージュの凱旋」よりは後とはすぐに理解し、「ジーン」とか「マドンナ」も、こっちが後だな、など時系列の如何を頭の中でひねりながら読むのも、案外楽しい。

地域医療の困窮は何も本作での状況ばかりではなく、居住地域の中堅どころの病院がある日、外車のショールームに変容していたなんという話は今日び珍しいことではないが、地域行政、地域経済のそれと密接に関連したケースであれば、さらに深刻に違いない。

どうも本作は上手く継ぎ目をかけはぎしたオムニバス三作のようだ、とは読後感だ。第1楽章の主旋律と第2、第3のそれは後で考え合わせれば、確かに違うんである。恐らく読者は読み終わっても、第1楽章の主旋律が再び奏でられるのではないかとあてのない期待をし続けてしまうに違いない。

ああ、それで「ラプソディ」ねと表題の意図は組み取ったとして、「で結局、話の続きは?」という気分のまま終わるのは、第1楽章がエキサイティングなだけに、第2楽章の緊迫感の魅力は認めたとしても、どこか「尻切れトンボ」感を抱いてしまうのは残念だ。瀕死の「市民病院」の再生の行方が気になるのは人情だろう。
が……
もし、それもまた著者の例の「遠望術策」で広大に広がる物語群の入口への「誘い」なんだとしたら。
いんや、きっとそうに違いない。
だってさー、NTTの番号案内の基地が沖縄にあったりするわけじゃない。たとえばさ、AIセンターが極北市にできても不思議はないよね。
その場合、さしずめ表題は……えーと、えーと……

わっかんないッ!!!

ともかくも、早く次が読みたい。

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作者名:海堂 尊
ジャンル:ミステリ
出版:朝日新聞社出版

極北ラプソディ