デッドエンド―ボディーガード工藤兵悟4

本シリーズ1から3、いずれもこの上なく面白かったが、4はまた、それらと並び立つ、いや恐らくそれらを凌駕する面白さだ。
1から3と比するに「ボディーガードもの」は「諜報もの」の色彩を濃くし、それが故に奥行きを深めている。

出だしから読者心理は得体の知れない、言えばどこか気色の悪いクライアントより、工藤が対峙しなければならない「敵」の「哀しみを帯びた眼差し」に惹きつけられる。それもこれも今野さんの綿密な計算だとは、読み終えて初めて気づかされる。猛烈な緊張感と不思議な時間感覚で絡め捕られて何もかも忘れて、読み耽ってしまうのだ。ストップモーションとスローモーションのスイッチが瞬時に入れ替えられるような、頻度の高いそんなスイッチングで脳髄が痺れる。臨場感が恐ろしいまでだ。

シリーズ3からお約束の巻末の「解説」だが、要注意だ。
と忠告しても、どうせお読みになるだろうから言っておく。最後まで「解説」を読み切れば、必ずや「他シリーズ」に手を出す羽目になる。どうやら、あの「哀しい眼差し」の所以を解明するには、そうするより他に術はないと言いくるめられる。

間違いなく「解説者」は出版社の回し者なのだ。
だがしかし……
その「やられた〜」感。
スゲエ嬉しい!!!

一点気になることが……
3が出て17年目に出たこの4らしいが、気まぐれ延長は期待していいんでしょうか、今野さん!

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作者名:今野 敏
ジャンル:ミステリ
出版:ハルキ文庫

デッドエンド―ボディーガード工藤兵悟4