ある日、世界各地に出現した巨大な宇宙船。攻撃してくるわけでもなく、音や光を発するわけでもなく、ただ中空にじっと浮かんだままの未知なる物体……。”エイリアンとのコミュニケーションを描いた『未知との遭遇』以来最高の映画!―「NYポスト」”、“『未知との遭遇』、『コンタクト』、『インターステラ―』を観たときと同じ驚きと畏怖の念を感じた。―「ハリウッド・リポーター」”と各誌からの絶賛のほか、ナショナル・ボード・オブ・レビューで主演女優賞、アカデミー賞でも作品賞・監督賞・脚色賞ほか8部門でノミネートされるなど、各地の映画賞で47受賞、153のノミネートを果たしたSFヒューマンドラマ大作だ。
ある日、地球上の様々な場所に細長い石のような大きな宇宙船が出現する。各国の対応は様々だったが、アメリカは謎の知的生命体と意志の疎通をはかるため、彼らとの意思疎通を言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)に依頼。片や物理学の見地からの依頼を受けたイアン(ジェレミー・レナー)とともに、彼らの言語を解読しはじめるが……。
まったく、なんという映画だ。結論から言うなら、私はクライマックスで号泣した。もっとも、試写室で大声をあげて泣くわけにもいかないから、ハンカチで口を押え、うぇっうぇっと出てきそうな嗚咽をこらえるのに必死だった。
何がどうなって、本作はここまで人を感動させるのか。
まず、本作には原作の小説がある。中国系の作家テッド・チャンによる短編小説「あなたの人生の物語」で、オールタイム・ベストSF(SFマガジン創刊700号記念・海外短編部門)で堂々1位に輝いた名作だ。この原作を選んだ時点で、製作陣はすでに勝利を手にしたようなものだ。
そして、監督は『灼熱の魂』『プリズナーズ』『複製された男』のドゥニ・ヴィルヌーヴ。リドリー・スコット、デヴィッド・リンチの系譜を継ぎうる監督として今ハリウッドが最も注目しており、2017年公開予定の『ブレードランナー 2049』も彼が監督を務める。
監督曰く、本作では「実は僕とチームは日本のデザインに影響を受けたんだ。エイリアンに強い存在感を与えるため、筆の感じや禅をイメージしました」とのこと。ハリウッド大作のように非現実的でド派手な演出をせず、逆に派手さのない日常を淡々と切り取ったかのような空気感が全編を支配する。宇宙船襲来という非日常を描いているのに、だ。この、どちらかというと明るくはない暗めなタッチが、高めの湿度が、本作のリアル感を最大限に増幅させ、観る者の心に、日常に、ガッツリと染み渡っていく。
知的生命体から発せられるメッセージ。それも確かに、メッセージであることに何ら異論はない。だが、本作の真のメッセージは、ルイーズの心境の変化、その過程だ。彼女の生きる姿勢こそが、彼女の生き方こそが、本作のメッセージなのだ。
原作:テッド・チャン「あなたの人生の物語」ハヤカワ文庫刊
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ(『プリズナーズ』『複製された男』『ボーダーライン』)
脚本:エリック・ハイセラー(『ライト/オフ』)
出演:エイミー・アダムス(『アメリカン・ハッスル』『バットマンvs スーパーマンジャスティスの誕生』) ジェレミー・レナー(『ハート・ロッカー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』) フォレスト・ウィテカー(『ラストキング・オブ・スコットランド』『大統領の執事の涙』)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:5月19日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
公式HP:http://www.message-movie.jp/
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